[解説・意味]
6枚目のアルバム『Warning』に収録されていて、ビルボードのモダンロックチャートでは5週連続1位という大ヒットシングルでもあり、個人的にはグリーン・デイを初めて知った曲なので思い入れがある。
九州のサッカーファンとしては、サガン鳥栖のチャントのイメージもあるかな。
アコースティックギターから始まる、アコーディオンも混ざった軽快なメロディの「少数派でいたい。多数派には同調しない」というシンプルな曲。
と捉えても問題はないんだけど、意外と下地になっているものが複雑だったりするので、この曲を理解する上で必要な情報を先に書いておく。
まずは、道徳的多数派と訳したモラル・マジョリティ。
1960年代にベトナム戦争やヒッピー等を起因として流行したリベラルな空気感への反動で、70年代に共和党保守派と結びついた妊娠中絶や同性愛に反対する政治運動(団体)・またその運動を象徴する言葉。
テレビの伝道師であり、牧師だったジェリー・ファルウェルが設立者として有名だが、現在は組織としては解体されており、その伝統的キリスト教価値観を受け継ぐ団体としてはエホバの証人が有名。
I pledge allegiance…というのは『忠誠の誓い』というアメリカの公式行事で暗唱される宣誓のもじりで、神へと忠誠を誓うのではなく、犬へと誓うことで反体制の姿勢を示している。
歌詞内のminorityが性的マイノリティだけでなく、ありとあらゆる少数派を指しているように、マジョリティも幅広い多数派を含んでいる。
この曲の歌詞は要するに、自分が孤立を恐れないというスタンス・生き方を示すことで、
多数派による空気感や同調圧力に屈せず・鵜呑みにせず、
自分の目で見て、自分の意見を持つことの必要性を訴えている。
ビリー本人による言葉でも「The song is about being an individual(個性を持った一人の人間でいることについての歌)」と説明していて、また「居場所を見つけるために暗闇を漂うこと」とも発言している。
現在は(多数派が圧し殺される場合もある程に)少数派の意見を聞くこと・採用することが当然の社会となったが、時代がGreen Dayに追いついたという見方もできるだろう。
バンドとしてはこの辺りの時期は、単なるポップパンクからの脱却を目指しており、サウンド面では大胆にアコースティックを導入したり、歌詞ではより明確な政治的テーマを取り上げたり、といった試行錯誤が(1枚のアルバムの紛失を経て)次作『アメリカン・イディオット』へと繋がる。
[日本語訳]
マイノリティでありたい
あんたらの権威なんて必要ない
道徳的多数派になんかなびかない
だって少数派でいたいから
闇社会に忠誠を誓います
犬っころの下の一国家
そこで俺は孤立している
群衆に埋もれた顔
日が当たらずとも 型に反していようとも
疑わず 自分自身で選んだ 俺が知る唯一の生き方だ
だってマイノリティでありたいから
あんたらの権力なんて必要ない
道徳的多数派になんかなびかない
だって少数派でいたいから
列から抜け出したのさ
まるで羊が群れから逃げるように
歩調が合わず行進していたが
今は自分のリズムで進んでいる
俺が知る唯一の生き方だ
一つの光が 一つの心が
暗闇の中で瞬いているのに
千の壊れた心の沈黙によって盲目にされてしまう
「お願いだから」と彼女は俺に叫んだ
みんな自由なんだよ 連中なんてクソ喰らえだ
”お前はお前自身が見ているものだ”
だってマイノリティでありたいから
あんたらの権威なんて必要ない
道徳的多数派になんかなびかない
だって少数派でいたいから
[Lyrics/歌詞]
I wanna be the minority
I don’t need your authority
Down with the moral majority
‘Cause I wanna be the minority
I pledge allegiance to the underworld
One nation under dog
There of which I stand alone
A face in the crowd
Unsung, against the mold
Without a doubt, singled out, the only way I know
‘Cause I wanna be the minority
I don’t need your authority
Down with the moral majority
‘Cause I wanna be the minority
Stepped out of the line
Like a sheep runs from the herd
Marching out of time
To my own beat now
The only way I know
One light, one mind
Flashing in the dark
Blinded by the silence of a thousand broken hearts
“For crying out loud” she screamed unto me
A free for all, fuck ‘em all
“You are your own sight”
‘Cause I wanna be the minority
I don’t need your authority
Down with the moral majority
‘Cause I wanna be the minority
レコードの歌詞カードではI want to be the minorityと表記されているが、実際に歌われているのは口語的なwannaという省略形。
I don’t need your authorityを「お前らの権力には屈しない」にしようかと検討はしたけど、意訳すぎる気がしたのでやめた。