[解説・意味]
元の記事は2016年のニューアルバム『A Moon Shaped Pool(月の形をしたプール)』発売直後に投稿していて、まずは当時の紹介文をほぼそのまま載せておく。
レディオヘッドはわりと社会批判ソング(特に第三世界関連が多いイメージ)を作る。
新アルバムのこのリードトラックでは明らかに魔女狩りが歌われているけど、ここでの魔女狩りはいったい何の比喩だろうか。つい最近アフリカでのアルビノ殺しのニュースを読んだからどうしてもそれが思い浮かんでしまうけど、間違いなく昨年以降急激に増加している欧州難民を意識していると思う。
罪のない人間が罪を被り処刑される、貧困や内戦で祖国を追われるという理不尽な状況。難民は現在進行形で差別やテロ(これは受入国の住民の方が被害は大きいけど)といった問題に巻き込まれている。そういったことへの問題提起の歌として捉えた。「6ペンスの唄」はマザーグースに出てくる英語圏では有名な唄。唄の意味は諸説あるみたいだけど、罪人への懲悪説がここでは一番しっくりくる。
6ペンスのコインが結婚式で花嫁が身につけたり、幸せを呼ぶおまじないとされているから皮肉でもあるんだと思う。
当時の難民というのはシリアやアフリカからが特に多く、いつの間にかWikipediaに2015年欧州難民危機というページも作られてある。
現在の補足として書き足すと、トム曰く、この曲の歌詞はイギリスのタブロイド誌「ニュース・オブ・ザ・ワールド」が性犯罪者の名前と住所を掲載したことに触発されたらしい。
まあ、現代の魔女狩りってことかな。
しかし中世ヨーロッパの魔女狩りは犯罪とは無縁の、無実の女性が多数犠牲になっており、強引に水に沈められてそのまま死んだら人間判定、浮いてきたら魔女認定をして次は火あぶりの刑に処したりといった不条理すぎる迫害が平気で行われていた。
歌詞にはドアの赤い十字架も登場するが、これはペスト感染者の家のドアに赤い十字架が描かれていたことからだろう。
歌詞には出てこなくても、あらゆる差別が生まれる可能性、無責任な噂や集団圧力で、誰しもが加害者側・被害者側どちらにもなり得るというリスクが想像できる。
低空飛行のパニック発作というのは小さなことでも皆がパニックを起こすような現状かな。まさに今の社会だね。
得体の知れない暴露系インフルエンサーが噂を広め、その対象が根拠のないバッシング・中傷被害を受けるということがつい最近もあったけれど、なんだか現代日本でも魔女狩りは行われているのではないかと思えてくる。
[日本語訳]
影の中でありながら
絞首台には歓声が届く
これこそが狩りだ
これは低空飛行のパニック発作
ジュークボックスから流れる曲を歌おう
魔女を燃やせ
魔女を燃やせ
お前の棲家はわかっているぞ
木製ドアに赤い十字架
溺死しないなら火炙りだ
テーブルを囲んだ無責任な会話
全ての道理を捨て
誰とも視線は合わせず
一切反応せず
密告者を撃ち殺せ
これは低空飛行のパニック発作
6ペンスの唄を歌おう
魔女を燃やせ
魔女を燃やせ
お前の棲家はわかっているぞ
お前の棲家はわかっているぞ
[Lyrics/歌詞]
Stay in the shadows
Cheer at the gallows
This is a round up
This is a low flying panic attack
Sing a song on the jukebox that goes
Burn the witch
Burn the witch
We know where you live
Red crosses on wooden doors
And if you float, you burn
Loose talk around tables
Abandon all reason
Avoid all eye contact
Do not react
Shoot the messengers
This is a low flying panic attack
Sing the song of sixpence that goes
Burn the witch
Burn the witch
We know where you live
We know where you live