[解説・意味]
スザンヌ・ヴェガの2ndアルバム『Solitude Standing (ソリチュード・スタンディング)』は1曲目が「Tom’s Diner」という世界で初めてMP3フォーマットになったアカペラの曲で(アカペラといっても声量があるわけでもないし、声も裏返りそうになっていて、可憐な女性シンガーソングライターが呟いてますってな曲)、
それがまるでプロローグのようにさらっと終わって、「Luka」が流れ始める。
「Luka」は80年代後半にマイケル・ジャクソンやマドンナなんかが最高にイケイケな頃にヒットしたわけだけど、児童虐待を受けている子供の視点で書かれた曲というまあヒットソングとしては異端すぎる存在。(現在もそんな曲はほとんどヒットチャートに乗ることがないわけだし)
ヒットの要因は多分、重たい歌詞ではあるけど、私は17才の頃にハイスクールで切ない恋をした、みたいなことが歌われていてもおかしくないくらい曲調が爽やかだからだと思う。歌詞について深く考えると辛くなるけど、メロディもアレンジもとても聴きやすい作りになっている。
歌詞ではルカという子供(個人的なイメージでは男の子)から上の階の住人へと歌われているが、この住人とは歌を聴いている人のことで、この歌はリスナー各々に向けられているという解釈で正しいと思う。あなたのすぐ近くに(どこにでも)ルカのような子供はいるよというメタファーとして受け取れる。
体験したことのない人には想像すらできないだろうけど、虐待を受けている子供の多くが恐怖のあまり絶対的な諦めを持つようになる。逆らったらもっと怒られるから、できるだけ反抗せずに、良い子であることを努める。でも良い子にしていても些細なことで怒られ、暴力を振るわれるから常にビクビクと怯え続けている。
他の誰かに相談したことがバレたら、そのことを追求されて更に暴力を受けるのがわかっている。だから助けてもらいたいのに、本当のことは喋れないという絶望的であまりに悲しい状況が浮かんでくる。その環境は被害に遭っている少年少女にとって地獄でしかない。
ルカの心理は上記のそれでほぼ合っていると思う。スザンヌ・ヴェガ自体幼い頃に親が再婚していたり、ニューヨークの社会的問題を抱えた子供の多い地域で育ったらしいから、そうした環境が身近にあったのだろう。
まあ、シンプルに言えば、恵まれていた人ほど共感できない歌。
[日本語訳]
ぼくの名前はルカ
二階に住んでるよ
君の上の階だから
君はぼくを見かけたことがあると思うな
もし夜遅くに何か聞こえても
揉め事や争い事のような音でも
何があったのかは聞かないで
何があったのかは聞かないで
何があったのかは聞かないで
ぼくがドジなのがいけないんだ
もっと静かにしてなくちゃ
きっとぼくの頭がおかしいせいなんだ
もっとお利口にしてなくちゃ
あの人たちは泣くまで叩いてくるだけ
どうしてそんなことをするのなんて聞いちゃだめだよ
逆らったらだめだよ
逆らったらだめだよ
逆らったらだめだよ
うん ぼくなら大丈夫
またドアにぶつかっただけだから
君がどんなに尋ねたってそうとしか言えないよ
それにどうせ君には関係ないことだし
一人きりになりたいな
何も壊されたり投げられたりしない場所がいい
元気かなんて聞かないで
どうしたのなんて聞かないで
大丈夫かなんて聞かないで
あの人たちは泣くまで叩いてくるだけ
どうしてそんなことをするのなんて聞いちゃだめだよ
逆らったらだめだよ
逆らったらだめだよ
逆らったらだめだよ
[Lyrics/歌詞]
My name is Luka
I live on the second floor
I live upstairs from you
Yes, I think you’ve seen me before
If you hear something late at night
Some kind of trouble, some kind of fight
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
I think it’s because I’m clumsy
I try not to talk too loud
Maybe it’s because I’m crazy
I try not to act too proud
They only hit until you cry
After that, you don’t ask why
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
Yes, I think I’m okay
I walked into the door again
If you ask that’s what I’ll say
And it’s not your business anyway
I guess I’d like to be alone
With nothing broken, nothing thrown
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am
And they only hit until you cry
And after that, you don’t ask why
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore